授業研究:(2年生)
「バスのうんてんしゅ」の授業ビデオを使って
(昭和61年6月19日 筑波大学附属小学校)有田和正先生
第4回有田先生と勉強する会1998年(H10年)1月5日(月)
村山市碁点温泉「クアハウス碁点」
参会者のうち
筑波で授業を見た…………1名
ビデオを見たことがある…0人
『今、生活科でもバスの運転手、バスの運転手ではありませんが、乗り物の乗り方みたいな単元がありますが、導入としては今もこういう形で行われています。生活科でも使えるかと思います。社会科の場合は、バスの乗り方よりも、バスの運転手が正確に安全に目的地まで送っていくということをつかませることがねらいですよね。生活科の方はバスをいかにうまく利用するかという立場ですよね。そこでねらいがちょっと違いますけれども、そうは言ってもですよ、乗り物は安全に活用するだけじゃなくて、相手の立場も理解するという意味においては、社会科的なものの見方は必要ですから、私は生活科でも使えると、実際そういう授業も見せていただいております。そういう意味で見ていただければと思います。一つ、ポイントは、2年生の子どもが生き生きするというのはどういうことなのかということです。いっぺんにですね40人の子どもが全員しゃべるんですね、それをどう聞き分けて、方向性をつけていくかという、そのへんを私の指導技術として見るべきものがあれば、一つ見て頂きたい。それから、ポイントになるものはおさえなければいけませんから、そういうことだと思います。それから3点目は、そのためには、キーポイントとなる発問が3つあるんです。それはどれだろうか。ということあたりを見ていただいたらどうかと思います。以上です。』
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☆「非常に自然な形で良いんですけども、すごくにぎやかな子だとすごくいっぱいしゃべると思うんです。しゃべらない子は、ほとんどしゃべってない子もいると思うんですけども、そのあたりで有田先生は心配にならないのかなと。この子は考えているのか、考えていないのかというあたりで、どうでしょうか?」
しゃべらない子
★『全然考えてないですね。心配していない。この場で言わなくても他の所で言うとかね。一人ひとり把握していますから。しゃべらせないと出てこないという子もいるんですよ。そういう子は、泳がしていますし。佐藤くんを今指名しましたね。あの子がハッスルしないと授業が盛り上がらないんですよ。それで、わざわざ佐藤どうだっていうふうにね。あの子が今から盛り上げますから。
ついでに言いますけど、数を問うってこと、なんの意味があるかということ。1年生2年生ぐらいの子どもをハッスルさせる、意欲を引き出すコツなんですよ。これをやらないでいきなり本質論にいったら、盛り上がりません。これ遊びですね。あの数なんて、実はどうでもいいんです。どうでもいいことを言って、ジワジワ子どもの意欲を引き出しているところなんです。そういう風に見て頂いたら。』
「ありがとうございました。」
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☆「先程の質問とダブル面があると思うのですが、テンション的な質問で申し訳ないのですが、特に1年生とか2年生の場合、基本的な学習の訓練というようなことで、例えば手を挙げて返事をして立ちましょうとか、それから友達が意見を言っているときは黙って聞きましょうとか、そういったことがずっと話題になると思うんです。例えばあんまりそういう型にはめすぎると、子どもが意見を言わなくなったり、話形とかそういうことにこだわりさせすぎるとなかなか子どもは本音を言いにくいんじゃないかなと。でも、まったく自由につぶやきを大事にすると言いながら自由にさせていると、今度は収拾がつかなくなってくるというようなことで、いつも子どもの意欲とかやる気を出させたいなとそういう面で、いわゆる形をまず教えるとかっていうような面で、有田先生は子どもたちの意欲を引き出すというようなことから、学習の基本的な訓練ということには、どのようにお考えなのか聞かせて頂ければと思います。」
学習の基本的な訓練
★『こういう質問出るだろうと思っていましたけども、あの今までもですね、この授業が非常に良くない授業というのが20~30%、70~80%が大体子どもが生き生きとして良い授業だというふうに分かれております。前者の立場に立たれる方は、子どものマナーが良くない、授業のマナー・態度ですね。従って今言いました挙手するときは手をちゃんとあげて。実際そうなんです。では、この子たちが学習習慣ができてないかというと、そうでもないんです。もうとにかく待っていられないんです。これを待たせて挙手させて指名したら、こういう授業にはならないと思うんですよね。意欲が出てこない。きちっとさせる授業の時は、きちっとさせていますし、この授業の時にですね、研究会の時ですけども、何とまったく同じ様な感じでですね、ああいう自由奔放にやっている場面と両方あります。でも、きちっとした場面ではきちっと言えますよ。論争もできます。後半ぐらい、子ども同士が論争をするところがありますが、そういうのを見てますと、きちっとやれるところはやれるんです。でも、好き好きですかねえ、最後はねえ。私なんか大雑把な人間ですから、あんまりきちっとするの嫌いなんです。きちっと座って、ハイってね、ハイは一回とかね。二回言ったら指名しないとかね。きめの細かい先生いるでしょう。もうちょっと大らかな方がいいんじゃないかという。これ生活科向きですよね。生活科ってこういうワーっていう中で、みんなそれぞれが自分の問題を追究している格好でしょう。だから、それぞれ好き好きになるんじゃないかなあと思いますが、先生こういうの嫌いですか?』
☆「いや、大好きです。」
★『ハハハー。そう思いますよ。これ見て一番嫌うのは国語の先生です。社会科の先生はみんなね、おもしろいって言うんです。国語の先生は大嫌い。なぜかって言ったらね、こんなガヤガヤ言って読み深めはできないってこう言うんですね。なる程なあ。それで国語は冷たいんだねえって言ったんですけども。国語の先生は、どちらかというと嫌いますね。先生国語ですか?』
☆「数学です。」
★『数学の先生なの。そうですね、どちらかというと、国語・数学の先生がうるさいと言います。確かに、もっと静かにした方がいいと思いますよ。そう思うんだけどねえ。それをおさえたらね、今度動かなくなっちゃうもんねえ。その兼ね合いがいつも悩んでいましたけども。でも、きちっとやるべき所はできる。私がしっと言ったら、止めますね。聞きますね。それから、ポイントになる発問、子どもが誰か他の子が言ったことでも、これは聞いて欲しい、ちゃんと聞いているんですよ。憎たらしいくらい。聞いてなきゃねえ、しゃべっているからだと言おうと思うんだけども、ガンガン言いながらちゃんと聞いているもんで何も言いようがないですけども。だから、静かにしているから良く聞いている。騒いでいるから聞いていないとは、言えないんですね。そこは、雑草が生えているから作物の出来が悪いとは言えないでしょう。雑草だらけの中に良い作物を作っているじゃないですか。それと同じで……逆の場合もありますよ、勿論ね。最後、好き好きと言うことで。』
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☆「運転手を前によこしたり、吊革をしている子どもや、今バックミラーや後ろを見る鏡を持たせている子どもがいるんですけども、有田先生は意図的に子どもたちを選んで前に出したり持たせたりしているのか、それとも、見た感じで……。」
★『あのね、運転手も最初からこの子やろうと、ちゃんと決めていましたよ。それから、前に二人吊革だしてやる、これも二人決めてましてね。あの吊革の二人はね、絶対授業に乗ってこない子なんですよ。だから、ああいう目立つ所に連れてこないとやらないんですね。
ですから、二人最後までいいと思ったら、小さい方の子がなかなかチョロチョロしているんですね。二人いるとケンカするもんですから、一人だけ下げたんです。この子はああいう所だと発言するんです。座ったらいたずらするんですね。運転手に、この場合は、毎日バスで通学している比較的バスに詳しい子を運転手にしないと、全く知らない子を選んだらこの授業は成立しないんです。だから、事前に調べてどの子をやろうと。しかもおもしろい子じゃないといけないですから。運転手にどの子を選ぶかによって、この授業の後半が決まりますからね。そういうことで、全部計画的です。指導案でなく密案には書いてます。名前まで。でも、それを分からないようにさり気なくやるところが、うまさなんですけども。そういうことです。』
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☆「今、大変有名な発問のバスの運転手さんはどこを見ているのでしょうかという発問の後、子どもたちが大変意欲的になっていろんな場所、場所というかどこを見ているか、考えているところだと思うのですが、私も大分前の、何年前でしょうか、十年ぐらいも前に有田先生のこの発問を知って自分のクラスにやってみて大変盛り上がった経験もあるのです。こんなことを教えてもらえるかどうか分かりませんが、私は今になってもこういうすばらしい発問は自分でも考えがつかない発問だと思うのです。こういう発問を考えるこつといいますか、そういうのもしあれば教えて頂きたいということ。
もう1つですが、これも前、先生の授業を追試させて頂いたときに、子どもたち大変活動するんですけども、私の指導の仕方が悪かったのか、ノートなんですけども、私あまりこだわらなくてそのまましたらあまりノートとらなかったんですが、今授業を見ていると何か先生が黒板に書こうとすると、サッと書く子がいるのが目に付いたのですが、自分のクラスの場合だと、ほとんどノートとらないでワーっと盛り上がって終わったという感じだったんですが、ノート指導のコツというか、そのへん教えていただければ、お願いいたします。」
ノート指導のコツ
★『今の2つ目の方から先いきますと、さっき子どもを見たら、みんな右手に鉛筆を持っているのが分かったかと思うんです。挙手するときも鉛筆を持って、鉛筆を死んでも放すなというくらいですね。先程テレビでクローズアップされた場面がありましたけども、全員、授業が終わったときには書き終わってるというふうに。おたよりノートで鍛えていますから、早書きは、このクラスは平均で70くらいだったでしょうか? 一分間に70字くらいは書けた。この後持った子は72くらいでしたけども、1年生のときで。それから、先程ちょっと意見がありましたが、騒がしい、それからものを言わない、この時間に言わない子もいる、それで勉強しているんだろうかという質問をよく受けますが、これ終わったらですね、この時は、ノートを確か集めていたんじゃないかと思うんですが、見る時間がない、研究会ですから……。必ずノートを見るんですよ。そうするとどの子が何も書いていないとか、どの子どんなことを書いているかというが分かるわけです。子どもたちもノートには最後三角のマークをつけて、「今日の勉強で」という感想とか問題とか質問とかね、そういうのを自由に書くのをやっていました。それが板書を写すのと別に自分の考えを書く。ノートはものすごく僕大事にしていました。全教科ノートを持たせていました。最初は一年生の時は一冊で全部やりました。そうしたら子どもが困っちゃって、一つ一つ独立し、漢字のドリル、漢字の練習をするのに必要だなって独立し、計算ドリルに独立してですね。最初子どもがその必要感を味わうまで一冊。メモ帳もですね、おたよりノートも全部一冊でやりました。それが段々段々各教科に独立していって、それまでには大体10月頃までかかりましたけども、体育までノートを持たせていました。その時間の記録を書くということ。紙切れみたいなものに書くようなノートじゃあ、やっぱりまずいだろうと。だから生活科も必ずノートを書くようにと主張していますし、私もそれをやってきました。ノートは思考の作戦基地であるということですから、私はそういう考えでノートを非常に大事にしてきました。
発問を考えるコツ
それから、もう1つの発問ですけども、これは私も今も考えてやっているんですが、結局は子どもがいつも背景にありますから、教材研究で発問が決まると思いますね。この子ども、こんな子どもだから、こんな教材を使って、こんな授業をしたいというふうに、いつも密に考えていますね。だから、このバスの運転手をやるときは、こんな子どもだから、よしっ乗せるには、これ。これ3つの、大きく授業を大体、私は低学年の場合は、3つに分けていました。15分、15分、15分ぐらいで。話し合いだけでもですね、同じ話し合いでもちょっと質をかえるというふうに。そうしないとあきるんですよ。だから、最初数を聞いて、ごっこをやって、ごっこの中で話し合いを入れたり入れなかったりというふうにですね、差をつけていく。それで、結局、この教材でこんな授業をしたいと思うときに、発問が決まってくる。だから、結局授業の教材研究をぎりぎりやったら発問研究だと思いますね、最後は。この教材を出して、どういう発問をしたら子どもが動くのか考える。ですから、最後はどういう発問をするかですね。一時間に2つか3つ、そういう発問が浮かんだら、今度順序を考えれば良いわけで、比較的うまくいくんじゃないかと。でもねえ、いい発問というのはなかなか難しい、できませんねえ。発問の定石化というのを向山さんが言ったのは、この授業なんですね。この授業の今の発問で発問の定石って言えるんじゃないかって。それまでは、私は、前に授業していた時は、バスの運転手はどんな仕事をしていましたかと聞いたんです。これ、大人でも答えられませんよ。もっと単純に、一番前にいた女の子、遅れ気味の子でも前ぐらい言えるじゃないですか。一時間に一度も手を挙げられないような授業じゃまずい。やっぱり、一時間に2回か3回はですね、全員手が上がる発問をどこかにまぜていく。やっぱり易しい発問から、次へ段々難しい発問へと考えますけども、まず、どの発問があれば、この発問をすればこの授業は成立するというのを考えるべきなんじゃないかなあと思います。1つは、教材研究じゃないでしょうかねえ。』
◆ビデオを流す◆ <授業が終わる。>
☆「先程の質問とまただぶってくるのですけども、ある不登校傾向の子どもがいて、賑やかな子どもたちと一緒にいると、とにかく頭が痛くなったり吐き気がしてきたりするので、その子のことを考えて、あまりそういう賑やかになるような子どもを集めないで、少しおとなし目の子どもを集めてクラス編成をして、そのクラスにその子を入れたという、そういうクラス編成の仕方をしたのを知っているんですが、もしそういう、先程あったように今の授業をよしとする先生もいれば、うるさいと評価する先生もいるのと同じで、子どもの中にも、いいなあ、おもしろいなあ、何でもやらせてくれて自由で良いなあという子どもと、もうちょっと静かにしてほしい、うるさいと考える子どもがいないのかどうか。もしそういう子どもが有田学級に入ってきたときに有田先生はどんな対応をするのかお聞かせ下さい。」
静かさと騒がしさ
★『この時にノートを見ましたら、嫌だって書いた子はいなかったですね。でも、この授業は非常に賑やかな場面ですけども、次翌日の授業はそうでもなかったですよ。だから日によってかなり違いますから、時々は盛り上がらないとですね。つかみ合うぐらい。一番後ろでやってましたね、あの二人はもうちょっとやるとつかみ合いますからね。あの男の子と女の子。まあ勇ましい、とにかく手を振ってますでしょう。手が上がるぐらい。でも、翌日になりますとかなり静かになる。これ一時間だけ見て、まあこの授業の評価はそれでいいですけども、あと子どもたちの評価になってくると、静かな場面の授業もありますから、まあいいんじゃないですかねえ。まあそういうふうに思います。まあ不登校の子なんかいませんでしたし、でも先生仰るように静かでないと落ち着かない子がいるんですよ。もしそういう子どもがこのクラスにいたとしたら、私は両方変えますね。その静かでないと困る子どもを段々騒々しい中で慣れさせますね。で、騒々しい方の子どもを少し静かにしようねというふうにもっていく。両方必要じゃないかというふうに思うんですけども。でも、病的に受け付けない人がいますね。先生の中にもいますし、あれ見ただけで鳥肌が立つっていうくらい賑やかなのが嫌だっています。本当に静かに毎時間葬式のように千時間やらないと気が済まないという、そういう方もいらっしゃいます。だから、結局好き好きなのかなあと思います。しかし、最終的にはですね、子どもがどちらが育つかということじゃないですかね、勝負は。やっぱり子どもたちの能力、発言力、考える力、それから文章力、想像力、そういうのを見たときに、子どもに学習技能が育っているかというのが勝負なんじゃないでしょうかねえ。だから、私が一人ひとりの子どもを見て、こういう授業を時々やれば、子どもが育つ、子どもが乗ってくると、それで勉強がおもしろいと。この子なんか朝6時半頃か7時に学校に来るんですからね。1時間半ぐらいかけて、早く来すぎて困るような子どもたちでしたけども、それはそれ、学校がおもしろいからであろうと思います。ちょうど私大学一年生になったら、今一年生をやっている。浪人した子もいますけどね、大体あの子たちだれがどこに行ったか言えるんですね。
授業を通して親を変える
ついでにですね、こういうところがありましたね。自分の親を引き合いに出すということがありました。これは、ほぼ計画的なんですが、信号で親が止まっている。親は赤で行っているというのは事前に調べて知っていましたから。これもう一回言わせて、親に警鐘ならすという……。このビデオを親に見せましたからね。親はやられた~って言ってましたから、これから気をつけるって。授業を通して親を変えるという役割もあるんですよ。今生活科なんか非常にいいと思いますよ。家庭科の授業でですね、今まで料理を作るのに、ご飯とみそ汁とサンドイッチなんて決まっていましたね。最近の家庭科は子どもが作れるものを自由にどうぞという時代になっているじゃないですか。ドレッシングなんかね。この前尼崎に行きましたら十何種類のドレッシングを作っているんですよ。先生方なめて下さい、どれおいしいか、私全部なめてみました。実においしい。お母さんが作れるかっていったら、作れない。全部作り方をメモして帰って、6年生の子どもが、家に帰って親に教育するんですよ。ドレッシングの作り方を。そういう時代になってきていますね。今の若いお母さんは料理できないんですよ。ドレッシングを買ってくるもんで。それを子どもが6年生の子どもが多種多様なドレッシングを作る。だから、ちょっとね、時代が変わってきているんですよ。家庭で教育して学校に持ってきて学校でやるんじゃなくて、学校で教えてことを家に持って帰らせてやるんです。そういうことですね。
分からないことを問題にする
A君ちのお母さん赤でも行くんだよ。
ようしこれを授業でどこまで取り上げようかと、でこれいったんです。だから信号の色とか取り上げて問うときに、何で黄色から切り出したか。赤と青は出しませんでした。なぜ黄色か。それは、黄色が一番迷うからですよ。赤出したら止まれでしょう。青出したら進めでしょう。全然迷いません。そういうの出しても意味がない訳です。分からないところを問うんですよね。だから教育というのは教材でも分かったところを問題にするんじゃなくて、分からないことを問題にする。ここ(黄色)から問えば絶対迷う。避けていくとか、止まるとかねえ。いろいろ言ってましたけど、迷うところを問うということです。それから、布石というものがある。これをするために、1年生の時に信号の勉強をしましたねえと言ったんです。学校の行き帰りの学習で信号機を取り上げて、35種類くらいかな。いろいろな信号をどういう場所に、どういう信号があるか。その場所と信号。三差路の場合どうか。四つ角の場合どうか。交通量によって信号機は違うかですね。右折の矢印が出るかですね。様々な信号を35種類ぐらい子どもが、1年生の時にですよ。それを調べだして。それを僕はこの授業につなごうと計画してました。つまり1年生を持ったら、2年生になったらこのくらい授業して、3年生になったらこのくらい授業して、筑波の場合は3年計画ですから、1年持ったら1・2・3、4年持ったら4・5・6。だから、1年持ったときに3年生なったらこれしよう。2年生はこれしよう。年2回の研究会の指導案、考えていました。だから1年生やってこれやろう。
授業の中の遊び
もう1つですね。授業の中の遊びっての必要です。今の中で、かなり遊びがあるんです。流しているんです。どっちでもいいんです。45分間ですね、ぎゅうぎゅう詰めで基礎基本を詰め込まれたら、気違いになりますよ、これ。頭変になります。40分間の中で、押さえなきゃならないこと、いくらありますか。ほんのわずかですよ。ほんのわずかを運転手が全部言ってくれたじゃないですか。そう言える子を運転手にしたんですから。運転手はお客さんが乗っている時は、一生懸命やるんだとかね。そういうことを運転手に言わせて、後は遊びの部分。だから自動車の運転も一緒で、ハンドルでもブレーキでもアクセルでも、みな遊びがあるじゃない。遊びがなかったら事故起こしますよね。私は授業の中にも遊びが必要だろうと、こう思います。
幕の内弁当とグルメ弁当
最後にですね、今授業に対する考え方が変わってきている。私はこういう授業でいいと実際思っておりませんが、悪いとも思っていません。今までの勉強の仕方というのはですね、幕の内弁当。その幕の内弁当を、これからの授業はグルメ弁当。今グルメの時代でしょう。こういうふうに変えなきゃならない。幕の内弁当とは何かと言いますと、こう弁当があります。すると半分ぐらいはご飯が入っています。そして、区切りがありまして、漬け物というものが入っていますね。それから、梅干し、梅も入っています。焼き魚。そしてこのへんに卵焼き。それから、煮物。つまりですね、幕の内弁当というのは、基礎基本がびっちり入っている弁当です。基礎基本なんです。基礎基本が、ご飯、梅干し、焼き魚、卵焼き。これがですよ、梅干し、焼き魚、卵焼き、これが弁当の三種の神器です。これが入っていないと幕の内弁当と言わないんですね。そういうものが基礎基本なんです。こういうお仕着せですよ。全部入ったやつ、お仕着せでしょう。先生が幕の内弁当を作って、いいですかこれが基礎基本で大事ですよって、1年生はこれ、2年生はこれ、1年弁当、2年弁当、3年弁当を食べさせてきた。そういう時代は終わったというんです。
今やグルメ弁当。グルメ弁当は基礎基本がいらないかというと、いりますよね。ご飯がないと弁当になりませんから、ご飯は絶対に必要。梅干しぐらいは日本人ですからこれはつける。それから、漬け物。漬け物っていうのは、日本人には必要でしょう。それから、大体卵焼きは入れる。焼き魚ぐらいはつける。後、4品ぐらい、これを子どもに自由に選びなさい。選ばせる。これがグルメ弁当なんですよね。
中間のまとめが出ました。中間のまとめのエキスは何かというと、選択じゃないでしょうか。社会科も3年・4年を地域学習だから内容を一緒にして出すと言ってますね。3・4年一緒。ねらいも一緒だと言ってますよ。そうすると、3・4年一緒にすると、3年生は何をするか。4年生は何をするか。どうぞ、先生・子ども、自由に選んで下さい。
まずねえ、私今教科書をやっていて、どうするの次って言ってるんです。教科書会社は、私は著者として、3年の最初のグルメ弁当を何を選ぶか。もうすぐ指導要領出てきます。ところが指導要領の中にこういう選択の部分がかなり多くなってくる。今の道徳みたいになりますよ。1・2年、3・4年、5・6年。それで一緒でしょう。そういうふうになってくる。それを私はグルメ弁当と表現しています。グルメですからおいしくなけりゃいけません。多少栄養の偏りがあってもいい。栄養の偏りがあっても良いから、本当に自分の好きなものを食べろ。自分の好きなものを選べ。その好きなものを選べば、後は一年間トータルすれば幕の内弁当的になっていくのでしょう。だからもっと自由にこういう部分(選択)を膨らませましょう。こういうことなんですねえ。
国語の場合は文学的文章に偏りがちであるから、それを改めよ。もっと説明文を使って読み方を身につけよう。言語技能と言っていますね。言語感覚を磨き、言語技能を身につけなけりゃいけない。言語感覚、つまり言葉に敏感にして、言葉を使う技能を身につけなければいけない。選ぶときに何が必要かというと、技能が必要です。学習技能が必要です。どういうふうに選ぶかというと、私が主張しているのは、学習技能は選択するのに働く。おもしろいはてな? おもしろいはてなが発見できるもの。これは当然選ばれます。
ここ(グルメ弁当の選択部分)を自由に選んで下さい。料金は一緒です。ご飯と漬け物と卵焼きと魚ぐらい入れた弁当をもらって、お金払って、後は自分で自由に選んでいい。たったそれだけのことで、このお弁当屋さんがものすごくうれて、あとの幕の内弁当的にきちっと作った弁当はそこそこだと。弁当一つみてもそうなんです。そういう時代に来ている。子どもたちに先生が選んでこれが大事ですよとバーンと与えるのではなくて、子どもが「先生これやっぱりおいしいよ。これ食べたいよ。」っていうふうに育てなければ。そういうこと。食べたいっていう意欲を起こさせなければいけませんよね。そういう時代になって私は、次の指導要領は幕の内弁当は終わり。まさにグルメ。牛丼みたいな弁当を食べたい人は牛ね。ウナギ食べたい人はウナギね。でも、ウナギも三日も食べれば飽きますでしょう。そうすれば他のものも食べるじゃないですか。トータルとして平均しているんじゃないかと。だから、やり方として食べさせ方としてそういうふうに変わってきているんじゃないかと思います。だから、今見ました授業も、私が価値があると思ったことを子どもたちに追究させたいようにしていますけども、ねらいはこっちが決めておかないとね。それを子ども自身に、ねらいなんてあんまり考えないでさせようと、そういうふうになりつつあるように思います。決めては何かというとこれ(学習技能)しかないです。内容じゃなくて、教材というのは手段ですから、子どもに身につけるのは、結局は学習の仕方、勉強の仕方、学習技能を身につけさせること。だから、次の指導要領のキーワードは、選択と学習技能だと思いますね。全教科にわたって、教材が全然減ります。時間数も減ります。その中で同じくらい能力をつけろったら、内容じゃもう間に合いませんよね。だから、そういう学習技能になっていくんじゃないかと思います。ま、こういうふうに考えたらどうでしょうか。』
☆「昨年度見せていただいた6年生の授業では、参考書などを見ている子どもたちが認められる存在だったんですけども、今日の子は2回とじられましたが、まだ開いて見ていたんですけども、2年生の子は参考書を見ることがだめであれば、何年生あたりから、どういう単元で使わせ始めるのかなあということと、あともう1点ですけども、今日の授業で調べる視点を与えて子どもたちをうちに帰したと思うんですけども、であるとすると電車まで広げてしまったことが、運転手が見れるのかなあという素朴な疑問と、他にも広げるように言ったと思うんですけども、残り3分で電車に広げないと、おそらくバスだと先生のクラスですから、帰った後乗ったりして色々調べてくると思うんですけども、電車まで広げられた意図をお教え下さい。」
参考書の使わせ方
★『参考書を、田島くんという運転手がたまたま持ってきた、バスの運転手の授業と知らなかったはずなんですが、バスのことと有名なことという2年生の参考書を持ってきて、それを広げていたんです。あれにですね、バスのことがかなり詳しく出て来るんですよ。あの時間にね、あれ見て正解言われたらね、他の子どもが調べないんですよ。教科書なんか見ても、教科書は色々書いてありますから、そんなに詳しく書いていませんから、教科書は自由に見ています。でも、参考書は、僕が書いたんじゃないんだけども、ちょっと詳しく書いてありまして、これは分からない問題を残した方がいいので「見るな。」と言った訳。でも、見てましたよね。でもこれ、1年生から使わせていますよ、参考書は。指定している訳じゃなくて、今の時間にあそこで正解出されたら困るっていうこと。
子どもの視野の広げ方
それから、電車へ広げましたが、子どもから出てくると思ったんですよ。例えばけいた君っていう子なんかは、バスの運転手のことを色々言っているけど、電車の運転手はどうするんだろうなあとかね、もうちょっと欲しかったんですが、2年生では無理ですかねえ。私そういう欲求持ってたんですねえ。でも子どもから出なかったですねえ。さすがのけいた君も電車を出せなかった。そこで、私が電車を出した。じゃあ次の時間に電車にスッキリ行ったかといったら、行きませんよ。それは行かないですよ。子どもはまだバスにこだわっていますから。で今言った健太君は電車の方が大変だって言ったんです。あの子はすぐ調べてきまして、お母さんを動員してですね、東京都内の8つの会社、バス会社が色々違います。山手線の内側が大体都バスが走ってますね。それから、東横線という、それは大体東急バスが走っている。京王線沿いは大体京王バス。それから小田急バス、東部バスというふうに鉄道の沿線を大体その系統のバスが走っている。それで大体8社。もっともっとたくさんあるんですが、この健太君は8社調べて、吊革、タイヤの数、ブザーの数、全部乗ってですねお母さんと一緒に数えて、次の駅で違うバスに乗ってってやって一覧表作ってきましたよね、この子が。だから、電車へと言いながら実はまだそれにこだわっている。一番前の方に清家という女の子がいたんですが、この子は、都バスの営業所に行って運転手に、大体都バスどういうふうになっているかって1人で行くんですよ、バスの車庫に。そうしたらバスの車庫にいた運転手が連れていって、ここはこうですよ、ここはこうですよって説明してくれる。それをちゃんとはてな帳に書いてくる。それから、あのウ~ウ~とか言ってた子がいましたがね、あの子たち3人は電車通学なんですが、電車通学なのにバスに乗って帰る。そして、僕が聞いたバスの運転手はどこを見て運転していますかなんて問うわけですね。そしたら、運転中は話しかけないで下さいって書かっていて、運転手がこうやってね(指示する真似)そうかって、終点まで行くんですね、3人で。そして、終点まで着いてみんな下りたら、バスの運転手さんはどこを見て運転していますか。運転中は何を考えていますか。私がした質問、その通りしてですねえ、運転手の答えを聞いて翌日の授業に持ち込んだんです。須藤君ていう一番前にいた大きい男の子は、都バスの車庫に電話をかけて、都バスをどういうふうに運転中に注意しているか。それから、井上さわ子って子は、お母さんに家の回りぐるぐる運転させて、目の動きが運転中どう違うかね、それを調べる。ありとあらゆる調べ方をやってきました。その記録は、私どれかの本に書いていますが、全部ある。子どもの文章も全部持っていますんで。この授業が、非難する人色々いますけども、じゃあ、それだけ多様な活動を一時間で引き出せますかって言ったら、やっぱり文句言えないんじゃないかなと思うのですが。今のような動きをこの一時間で子どもがやったわけですよ。私もびっくりするくらいにですね。同じように、ポスト。ポストやった時も、本当に……あのS君ってでかい一番前にいた男の子。あの子がポスト作ってきましたよ。小さいポスト。これが僕が見たポストなんだ。ミニですけども僕がポストを見て、形がこうで、文字がこうで、ミニポストを作ってきて、それで発表した。そういうの授業になったらすぐ。お母さんも偉い。帰ってすぐ、翌日の授業まで作って持って来るんですからねえ。翌日の授業にそれを持ち込んで。そういう意欲的な親を育てるということも必要じゃないかと思いますけども。要するにですね、電車を持ち込まなくても良かったんですが、これを持ち込むことによって子どもの視野がポーンと広がるんじゃないかと思ったんですが、広がりませんでしたね。翌日みんなバスのことで、今みたいなことで、それについて話し合ったんですが。清家さんが都バスに行ったら、足をおいて、足をおいたらセンサーがなった。センサーが働いて、足が外になるとドアが閉められない。それから開けられない。そういう動きがあると言ったんですね。それから、体の不自由な人のために下の方にブザーがある。そのことをまったく私は知りませんでしたって、そのようなことも発見してきていますね。だから、導入っていうのは何かっていったら、一つは子どもの視野、これを視野を広げるっていうことだと思いますね。この視野を広げる、それからえーっていうはてなを引き出す。これが(視野を広げる)これ(はてな?)にもつながっていく訳ですねえ。それから、はてなと同時に子どもが調べてみたい、こういう何と言っても意欲ですねえ。これははてなからも発展しますが。それから、意欲だけじゃないで、どうやって調べたらいいかという調べ方。私この時間調べ方なんて全然やっていませんが、子どもたちは、調べ方はいわゆる学習技能ですねえ、これは今申し上げたようにかなり多様なことをやってきた。だから、多様な調べ方を発表させましたね。そうしたら他の子どもへ「へーそんな調べ方があるのお。」ってことは、他の子どもへ伝わりますよねえ。そうしたらこの子はもう5通りの調べ方が分かる。そうすると今度は実際にやってみる。だから、どういうのが……一つは意欲なんですが、私はこれ(視野を広げる)が必要だと、視野を広げるという作業、その一つとして電車を持ってきた訳ですけども、無理して持ってくることもなかったんですが、結果としてはあまり広がらなかった。こういうことですね。子どもがこちら(バス)の方にまだこだわっていたということ。
授業の評価
授業の評価というのは、本当に1時間だけ評価するのは、本当に難しいと思う。でも今、評価しざるを得ないんですよね。私、今年計算しましたら102……昨年までの間に、4月から12月までの間に、102の学級の授業を見せてもらいました。後予定がありますから、後60学級ぐらいになりそうなんですね。そうすると160学級ぐらい年間見ると、ほとんどがその授業を見るその場で、その時間で評価して、何か言わなけりゃいけないでしょう。本当は失礼なんですよね。その授業はすごく良くてもね、次はね全然発展しない授業ありますよ。なぜかというと2日間同じ学校へ行ったことあるんですよ。1時間目すっごいなあと思って翌日行ったらパーなんです。それじゃあやっぱりねえ。だから見かけに騙されますよ。それからね、1時間見てね、これ大したことないなあって、でも子どもがちょっとこしがあるなあと思ったら、翌日になったらそれがぐっとねえ伸びていった。だから1時間だけで人様の授業を評価するというのは大変。自分で評価するときは、やっぱり1時間だけでなくて、今大抵こういうじゃないですか、一単元一サイクルとかね。大体7~8時間かな。7~8時間ぐらいで一つのサイクルで大体締めくくる。この中でどうするか。どうなったか。もうちょっとスケールを大きく。サイクルじゃなくて、これを大体15時間とか20時間とかすると、一単元になりますね。一単元ぐらいで子どもがどういう成長をしたかというふうに、ちょっとスケールを大きくしないと。最近ちょっと短くなりすぎているんじゃないかと、私自身反省しながら思うんです。私は自分の授業を評価するときに、翌日までに子どもが何をしてくれかによって今日の授業を評価することにしています。今日は今日で一応評価する。翌日にどんな追究を子どもがしてきているか、これによって今日の授業をもう一回フィードバックした時に、評価できるんじゃないかとそういうふうに思うんです。ごつごつして見かけは悪いけれどもすごい授業。非常にその後にきれいに流れているけども翌日全然発展しなかったとかね、あるもんですからねえ、難しいなあと思います。』
☆「調べ方、追究の仕方ということでもう少しお伺いしたいんですけども、先生のクラスのように自分の足で行動的に視野を広げて調べられるっていうのが一番望ましい姿だなと思う訳なんですけども、うちのクラスなどを見てみると、「先生調べてきました。」「どれや見せてみろ。」っていうと参考書何かの丸写しっていう程度で終わってしまうことがほとんどだという実状だと思うんですけども、そういった子どもたちに参考書を使う使わないというのではなくて、追究のさせ方を身につけさせていくにはどうすればいいのかというあたりを教えて頂ければと思います。」
追究する子の育て方
『この子どもたちが今多様な調べ方をしたと申し上げた、それ1年生からの積み重ねですよね。このバスの授業をする直前に何をしたかというと、これ6月にやった授業なんです、今の授業は。4月にですね、お金を百円ぐらいかな持ってこらせて、何するかというと明日バスに乗せる。一人ずつですよ。大塚車庫の前から大塚駅まで行って、反対側のバスに乗り換えて、終点ですから乗り換えて、そしてここまで帰ってきなさい。それを体験させたんです。そしたら、子どもが電車は乗れるけどバスはなかなか乗れない訳です。2年生です。最初ですから。お願いだからグループにしてくれって。私は一人で行かせるつもりだったんです。一人ずつ。それで泣くもんですから、泣いてお願いしますっていうんで、じゃあっていうんで4人か5人ずつグループで行かせたんです。いいか着いたら向こうで、僕絶対教えませんよ。向こう行ったらどういう所に行って乗ればこっちへ帰ってくる乗り場があるか教えない。行ったって、迷ったって東京都区内ぐらいだから大したことないと。で、無事に帰って来るだろうと。ちゃんと聞かないと、ここへ戻って生きて帰ってこれないからな。いいか、先生へ聞くんじゃない。向こうへ着いたらどこが乗り場かちゃんと聞いて乗ってここへ帰って来るんだ。先生反対側で待っているから。それでバス一台おきにラッシュの時間選びました。お客さんが一杯乗っているでしょう。その時は時間がもう2分か3分おきに来るでしょう。早いんですよ。押し込むんです。4・5人ずつですから何とか乗れます。それで大塚駅で乗せてですね、反対側から帰って来るんです。2つグループ帰って来ないんです。1時間待っても2時間待っても帰ってこない。どうしてか、間違ってですね帰り池袋行きに乗っちゃってですね、こっちへ帰ってこない。私青くなりましたよ、その時やっぱり。どうしよう。一人でやっているんですから。それで、他の子どもたちへ「もう君たち学校へ帰って休んでいなさい。」ていって僕が車庫の前でイライラしながら待っていたら、泣きながら帰ってきました。間違えて池袋に乗った。そこでおまわさんに大塚車庫に行くにはどうしたらいいかって言ったら、あれに乗れ、あれじゃだめだからそこまで連れて行けっておまわりさんにそこで乗せてもらって帰ってきたんだそうです。結局ねそういう失敗をさせますと尋ねることが上手になります。おまわりさん引っ張って行くんですね。そして確実に2回目は乗ってきている。そういうグループが2つあったんです。その時の子どもの動きを聞いてみると、しっかりとした子がいましてね。こういう時が大事なんだ、みんな笑っていこうなんてね。先生には笑って話そうとか言って、わざと笑ったりそういうことをする。思いがけない子が思いがけないことをするとその時分かりました。そういうちょっと際どい体験をさせています。そうするとやっぱり生きてきますね。それから1年で信号機調べて来る時、どこに信号機がある。よし行こう。もう大抵の時はみんなで授業を止めてみんなで信号機見に行きます。ほとんど行きましたね。学校の回りをくまなく歩きましたから、そういうふうに何かが出てきたら、よしそこに行って調べよう。そういう動きを子どもと一緒にやって積み重ねないとだめだと。子どもが書いたものだけを信用しないようにすることだと思うんですよね。やっぱり自分の目で見ないと納得できない子どもにする。それで、この子たちが3年生の時みかんの授業というのをやったんです。詳しい記録は社会科教育かなんか東大の出版から出た本に書いておりますけども、あのみかんの授業をやった時、私はわざわざ遠足を仕組んで三浦半島に遠足に行ったんですよ。そして、そこでさり気なくみかんを食べさせて楽しませておいて、しばらくおいてみかんの授業をやった。子どもが「やられた~これやるんだったらもっとよく見ておきゃ良かった。」ほらあねえ、ざまあみろって言ったんですよ。ざまあみろって言ったんですけども、帰りますと子どもたちをパーッとお母さん連れていくんです。私はそういう時にお母さん方に、自分の子どもだけどっか見学に連れていって出し抜いてはいけません。自分のお子さんの友達を何人か必ず連れていって下さい。そうしたら、あなたが5・6人連れていったら、今度はあなたが行かなくても次のお母さんが絶対にお返しに連れていってくれますから、絶対一人で自分の子どもだけを連れていくようなことをやっちゃいけない。最低5人は連れていって下さい。それを1年生の最初から洗脳していますから、そういうふうに。ですから、このバスの時だってそうですね、車庫のとことか色々連れて行きますし、ポストをやったら逓信総合博物館、国際郵便局なんか連れて行きますね。私が連れて行かなくても親が連れて行きますね。3年生のみかんの学習をやったら、みかんというのは東京にはありませんから、もう小田原まで、三浦半島まで行かなければなりませんでしょ。で、行ったんです。5・6人、10人連れていきますよ。そうやって何度か小田原に行っているうちに、他のとこに話題が広がりますから、今度は行けませんわね。そしたら今度は電話。一人電話でやってきたら、「わ~すげえなあ。」ってオーバーにほめると絶対伝染しますから、どうやって調べたらいいか、一人刺さったらいいんです。そうしたらその子をほめて、広げていくんですね。だから、そういう意味では、今出てきた健太君なんて粘っこい子ども、あれなんか昨日私、書き物するのに子どもたちの作文調べてみたら、健太君のお母さんから来た手紙が出てきまして、その手紙にはみかんの学習している時に、帰ってきたらランドセルも落ろさないで、ランドセル背負ったまま電話をかけている。何しているのって言ったら、いや今日学校で大問題になったので、至急調べなければならないって、帰ってきてランドセル背負ったまんま電話番号見て電話している。その姿を見て、私、お母さんが涙が出た。こんな子に良く育った。あのひ弱な子がここまで育ってうれしくなったという手紙、これがたまたま昨日出てきたんですが、そういう積み重ねですよね。結局布石なんです。だから、何にもこちらが手を打たないで子どもに力がつくことは絶対ない。それだけは、はっきり言えますね。何らかの形で、どこかで何かの指導をしておけば、やっぱり生きてきますよ。おもしろいことに、教科書なんかパーって読ませても何にも残ってないでしょう。ところがちょっとでも黒板に書いて、子どもと話し合いながら進めた授業なんて全部が残っていますからね。だから、手を抜けないですよ。言うなれば。ということで、多様な調べ方が出てくると言うことは、やっぱり何らかの形でそれまでにそういうことをちょこちょことやっているんですよ。例えば本ですねえ。例えば村山市だったら村山市のことを調べたとしますね。りんごならりんごのことを調べたとしますね。こういう書き物を知っている、本当だろうか、ちょっと見に行こう。そのデータを持って見に行ったら違っていた。やっぱり、実物を見ないとだめだねえ。書き物には時々嘘があるねえ。どっちを信用するかっていったら、こっちだねえ。そういうことが必要じゃないですかねえ。それができるのはですねえ4年の前半までなんですよ。1年、2年、3年。3年生は全部出来ますよ。4年の前半まではそれができる。4年の後半からは遠方になりますでしょ。だから、4年の前半までに郷土学習で十分に自分の足で実際見て調べる体験をさせておかないと、今度は参考書を見ても分からないんです。参考書を見た時に自分の足で調べた子は、あっこういうふうに書いているけど、あっそうだそうだって納得がいくんですね。だから、そういう体験が必要じゃないでしょうかねえ。欲張らないで何か1つでいいから、ここだったらやっぱりりんごとかサクランボとかいいんじゃないですか。今日けいおう桜というのを結城先生に連れていってもらいましたが、けいおう桜、私全然知りませんでしたね。桜の枝を取って、今からシーズンでしょう。桜の枝を取って2日間ぐらいおいといて、その暖房にきいた部屋に入れて、芽が出て咲きそうな状態になってきたら出荷する。ほとんど東京に出荷しているそうです。聞いてみると、老人対策で、手かかりませんから……仕事をしている人みんなお年寄りでしたねえ。言われてみると。組合長さん以下みんな、やっと歩いているような人が仕事をしていましたけども。それでも手はちゃんと達者でしょう。桜をちゃんと決めた長さに切って袋に入れて、水に入れてですねえ、それで出荷する。すると花屋さんで300円かそこらで買って、そんで帰ると桜がですねえ、咲くんですね。そういう桜がそこにあるなんて分からなかった。土手に桜がいっぱいありましたが、けいおう桜というのは、何か藺草みたいなこういう感じじゃないですか、桜がねえ。こういう桜があるなんて夢にも思わなかった。だからですねえ、結城先生に言ったの、やっぱり知らなかったら見えないもんですねえ。「これは桜ですよう。」と結城先生に言われて、「これ桜、止めて下さいよう。」ってねえ、それで後写真撮った。だから、やっぱり見ないと分からないですねえ。私なんか買うとしたら、この枝ぷつんと切った、この枝だけ買うわけでしょう。元がどうなっているか分からない。わりにスット伸びているんですねえ。普通のサクランボ咲くような、それから花を見る染井吉野なんて、枝が曲がっていますが、これはスット伸びていますね、比較的に。これなんかおもしろいと思いますよ。肥料をやると伸びすぎて花芽がつかないんです。だから荒れ地が良いと言うんですよ。だから植えさえすればいいんですよ。後は切ればいいんですね。それで、荒れ地で花芽がたくさんつけばいいという訳でしょう。そういうのを子どもと一緒に足下にある教材を、足下にある教材じゃないと調べられないじゃないですか。そういうの良いんじゃないですか。私、今朝の新聞を見て、朝日に出ていましたかね、写真入りで、天童市の齋藤さんって方がサクランボを出荷したのが出ていましたね。あれ見てびっくりしました。今頃サクランボができる。びっくりしました。良く読んだら、5月から9月頃まで冷蔵庫に入れる。どうやって入れるんだろう。おそらく鉢飢えだと思うんですねえ。鉢を移動して冷蔵庫に入れて、10月頃になったら、今度はハウスに入れる。そうすると今、できる。あの一箱15万ぐらいって言ってましたねえ。去年まで15万円したって言うんですねえ。やっぱり、そういうおもしろい教材があるじゃないですか。あれまさに宝石ですよ。一粒が千円近くするんじゃないですか。私去年岡山に行ってマスカット作ってたら、マスカット一粒が最低で300円って言いましたよ。あの枝がこう出ていますね、横向き。そのブドウの枝の横に電熱線がはってんですよ。枝に電熱線がついて、その下にブドウの枝ですよ。その下に電熱線があるんですよ。その電熱線はニクロム線みたいなやつですね。それが熱をこっちに与えるでしょう。それでできるんですよ。最低で300円、1粒。私2つぶ食べさせてもらいましたから、600円なんです。でも先生が食べたのはいいやつで、まあ500円くらい……私もう吐き出しそうになりましたけどねえ。おもしろいじゃないですか。そういういうの。子どもと一緒に調べたら、私なんか病みつきに成っちゃいますよね。子ども帰すの忘れちゃうんですよねえ。だから、今先生が仰ったようにすごく大事なことで、いい身の回りにある教材を選んで、それを、子どもとどうやって調べたらいいかなあ。どうやって調べようかなあ。行ってみようかなあ。と相談しながら1個ずつやっていく。一単元やったら子どもがぐっと成長しますよ。2つやったらもっと成長します。3つやったら3回分成長します。だから、そういうのを積み重ねていくのは、ゆっくりでいいと思うんです。それができるようになったら参考書です。参考書、先生仰るように、子どもというのは参考書から全部丸写ししますよね。それを国語の授業でやらなければいけません。国語の授業では、文章を読んでその要点は何かということを読みとる授業をやらなければ。それをいっくら要点だけ書くように言ったってだめです。要点のつかみ方を教えなけりゃ。先程の技術と一緒ですよ。要点を書きなさいと言うんだから、要点は何か。要点というのは難しいですから、キーワードを見つけさせた方がいいです。この文のキーワードは何か。それを見つけさせた方がいいです。それを手がかりにまとめさせる。それを国語でやらなけりゃいけない。勿論社会科でもやらなけりゃいけない。教科をもっと総合的にやった方がいいと思います。この次総合学習が出てきますけども、調べ方を身につけるには総合学習をやらないとだめじゃないでしょうかねえ。国語、算数と切りますからね。だから国語の国語辞典を使うのは、国語の時間だけになっちゃうでしょう。それは算数の時間、生活科の時間、理科の時間、もっと使わなけりゃあねえ。そうすると使い方を覚えてくると思います。調べ方は、そういうことでどうでしょうか。足がかりで1年一単元でいいですから、きっちりやって頂いたらどうかと思います。足下にある教材でやってほしいなあと思うんですが。』
☆「先程グルメ弁当のお話が出たんですけども。基礎基本という言葉がよく使われるんですが、そのとらえ方が使っている方によってすごく違うような気がして、私達毎日何が基礎基本なのかなあと迷いながら授業していて、今の状態ですと幕の内弁当をしっかり詰めるのに精一杯なんです。それプラス自由選択という余裕が全然なくて、幕の内弁当の魚もなんか詰まっていないような気がする授業ばっかりなんですけれども、有田先生がお考えになっている基礎基本というのはどんなものなんでしょうか。」
基礎基本
★『私は、基礎基本というものは決まっているものではないと思っていますね。これが基礎基本だと決まりがあるんじゃないというふうに思います。じゃあ何かというと、相対的なものです。基礎基本の条件を言いますと、応用がきくものはみんな基礎基本だと思います。応用がきく……例えばですね、去年この会に来た時に、林先生が東北ローズというバラの工場というか農園というかな、に連れていってくれましたね。その時に16塔ビニールハウスがあって、その中でバラを作っている。東北ローズってのは大きいですよ。日本一ではないでしょうか。バラを作っている農園としては。そのビニールハウスを見たら、そのビニールハウスは、こういうふうに並んでましたね。
全部こういうふうに、きれーいに並んでいる。私、その1つだけに入ったんですが。これ見たときに向きが全部一緒でしょう。こっち側が東西南北どちら側か……これ、南はどちらか。これは、こちら側が南です。朝日が……これ三角になっていますから、ガラスハウスはこう(三角)なっていますね。朝こちらから日が当たって、午後に下がりますね。そうすると、午前中はこちら側に日が当たって、午後はこっちが当たりますね。そうすると一日に満遍なく当たるんですねえ。こちら側を南にするとこうなりますね、するとこっち側が日が当たりにくいんですね。ビニールハウスというのは、地形にも関係ありますけども、日本全国どの地域もみんな南向きにこういうふうに並べる。そうすると、ビニールハウスの向きが頭にあれば、方位が分かりますね。私はいつも磁石を持っていますから、方位磁石で見たら間違いなくこっち。ちょっと向きが違うのもあるけど、大雑把に見たらみんなこっちの方を向いているなあったら、こっち側が南って応用がききますね。これが基礎基本ですね。というのが1つの物の見方の基礎基本ですし、算数のかけ算の時も、2×2なんていろんな所で使えるじゃないですか。かけ算のない生活なんてないでしょう。お金の計算、買い物をしても、何度もかけ算をしますねえ。そうするとこれはやっぱり基礎基本、応用がききますでしょう。だから第一に応用がきくものが基礎基本だと思います。条件の2番目はですね、応用がきくんですが、基礎基本というのは、身に付きにくいというこういう性質があります。だから子どもが何回やっても覚えないものは、これ基礎基本ですよ。大事なものほど覚えない。くだらんことはすぐ覚えるでしょう。先生が冗談言ったつまらんことは覚えていて、関係ないことは忘れてるじゃないですか。子どもが覚えにくい、あれ基礎基本ですねえ。なぜか、おもしろくないんです。基礎基本とはおもしろくないんですよ。だから身に着かないんですよ。だからどうするか。繰り返し繰り返しやらなければいけない。基礎基本って繰り返しが必要なんですよね。かけ算九九一回で覚えます? 覚えないじゃないですか。僕かけ算九九なんて理屈教える必要ないと思うんです。あれねえテープにとる……ににんがし、にさんがろく、にしがはち、にごじゅう、にろくじゅうにって音楽でやるんですよ、一日中歌いながら、それを朝から晩までかけている。掃除の時間も、ににんがし、にさんがろくって掃除するんです。もう、繰り返すしかないんじゃないかと思います。だから、プロ野球の選手はなぜ何十年もやっているのにね、落合なんて43か4でしょう? 十代からやっているんですよ。それだけやっている人が、キャンプになれば何します? 基礎基本じゃないですか。まずキャッチボールから。ボールでも一番最初から止まったボールを打つ練習からやるじゃないですか。身に付きにくいからですよ。キャンプでやっていることは、みんな基礎基本ですよ。試合は応用です。これが身に付いていないと応用がきかないんですよね。3番目は、基礎基本というのは、ちょっと質が変わりますけどね、非常に個性的なんです。どこにもあって、みんな同じように見えますが、実はですね、例えばですね、2×2は同じなんだけども、これが子どもの中に入って使われるときは、非常に個性的な使われ方をします。これ野球の例が一番良いです。落合のバットの振り方とイチローのバットの振り方は全く違うじゃないですか。松井のバットの振り方、皆違う。しかし、そういう選手はみんな基礎基本をちゃんと身につけているじゃないですか。身につけているにも関わらずものすごくこれ(個性的)、イチローなんてねえ、道理にはかなっているわけでしょう。振り子打法なんて。しかし、ものすごくこれ(個性的)。あれ基礎基本はないように見える、しかし、基礎基本にかなっている。だから見かけは非常に個性的に見える。個性的に見えるんですね。こういう特長は僕は基礎基本にあると思います。だから、子どもに身に付きにくいなあと思ったら、例えば辞書の引き方なんて身に付かないですね。あれは勿論基礎基本ですよ。1回言っても覚えないじゃないですか、ありがとうなんて言えないじゃないですか、子ども、いくらたっても。あれ基礎基本ですからね。人間としてのマナーの基礎基本は、あいさつとありがとうじゃないですか。で、ありがとう、いくら言っても言えませんよねえ。あれ基礎基本だから。また応用きくじゃないですか、ありがとう。どんな場面でも。外国に行ったらありがとうだけ覚えておけばいいでしょう。あと何もいらない。サンキューベリーマッチ1つで一ヶ月過ごせるんですからね、外国で。基礎基本とは、こんなものじゃないかと。私の考えています基礎基本の条件にはならないような条件です。例えば漢字なんか応用できますね。ありとあらゆる紙に使えますねえ。というふうに考えたらいいんじゃないでしょうか。グルメ弁当で子どもが何回食べさせても味が分からないのは、基礎基本かもしれません。例えば、ご飯なんて子どもたちに味が分からない。おいしいか、おいしくないか。米は今みんなおいしいですから、なかなか分からない。やっぱり基礎基本ですよね。そういうふうに考えたらどうかなあと思いますけど。これは、私の基礎基本の定義みたいなものですが、まあこんなもんじゃないかなあと思っています。宜しいでしょうか。』