有田実践を追って
「はてな?」で書く力を育む小学校入学期の作文指導
― 生活科を中心に言語活動を育む 有田和正の実践から ―
福岡教育大学附属小倉小学校での ①「お話の文」、②「わたしの研究」
筑波大学附属小学校での ③「研究文」、④「見たこと」、⑤「はてな?」
と、子どもに書かせる日記の名称の変遷が有田先生のねらいの変化となって表れていると考えられます。
本発表では、これらの中で、小学校入学期の指導である「お話の文」(1972年度福岡教育大学附属小倉小学校一年生)と、「はてな?」帳(1985年度・1991年度筑波大学附属小学校一年生)の実践から、有田先生の小学校入学期の児童における作文指導のあり方をまとめました。
「はてな?」の視点を持って物事を見つめさせ、そこから生まれた「驚く心」が子どもの中に文を生み作文力を高めることになること、そして、それこそが、生活科に求められる「気づき」であることを主張しました。
日本生活科・総合的学習教育学会
第27回全国大会北海道大会 自由研究発表 2018.6.16
「お話の文」と「はてな?」帳の比較です。図式化することによって見えてきたことがたくさんありました。
実際には、この2つの間に一年生の実践として「見たこと」があります。
「はてな?」帳の実践に至る前の「見たこと」と、「はてな?」帳の違いに、次のようにあります。
④「見たこと」
一年生には、「研究文」はなじめないし、無理である。
自分の目で、耳で確かめたことを書かせたい。本で見たことや、テレビの聞きかじりを書いたのでは弱い。何としても自分で苦労して入手したことや自分で追究したことを文章にさせてみたい。そうしないと追究の鬼は育たない、と考えた。
こうして、考えに考えた末の「見たこと」である。
「自分で見たことなら何でもよいから書きなさい。一行でもいいよ。そのかわり、自分の目で見てないものはダメだよ。」
と話し、できるだけ毎日書くようにはげました。
⑤「はてな?」
追究する子どもは育ってきたが、今の子どもの弱点である「問題発見」をする力が、今一つである。
問題を提示してやると、ものすごく追究する。驚くほど調べる。しかし、かんじんの「調べたくなる問題」の発見が弱い。これをカバーできるものはないだろうか、と考えた。
問題発見力を強くするものはないか、と考えてたどりついたのが、「はてな?」帳である。
「見たこと」でも同じではないか、といわれるかもしれない。しかし、ちがうのである。
身の回りをただ見るだけではなく、「はてな?」はないか、と見るのである。
角度をしぼって見る。「おかしいな?」と思うことはないか、と見る。
そうすると、今まで見えなかった「はてな?」が見えてくる。
一年生の成長記録 1996 明治図書 「追究の鬼」を育てるシリーズ⑭ から沼澤が抜粋
これがあるからこそ、「はてな?」帳の実践は、「はてな?」発表からはじまっているのだと分かりました。
そして、保護者との関わり方、「おたよりノート」、ユーモア教育、一枚の絵からの授業、オープンエンドの授業形態など、すべてがつながって見えてきました。
平成30年度第34回 学習デジタル教材コンクール
奨励賞受賞 「水の旅」
主催:公益財団法人学習ソフトウェア情報研究センター 後援:文部科学省
協賛:(一財)日本児童教育振興財団 (株)日本教育新聞社 東京書籍(株) パイオニアVC(株)
2016年度発表「仙台市自作視聴覚教材審査会」コンピュータソフト部門優秀賞受賞作「水の旅」(主催:仙台市教育委員会)を、方針・目的はそのままに、構成・編集において分かりやすさをもとに大幅な修正を加えて作成しました。
① Googleによる画像 【全体像の把握】
水の通り道が見える水管橋などを航空写真・地図・地形図で提示
② 現地で撮影した写真【具体性の実感】
自分達の暮らす地域が教材として登場してくる現実感を与えることで、児童
の追究心を育めるように、実際に現地で撮影した写真の提示
以上の①②を提示することによって、断片的になりがちな「水はどこから」の学習内容を多面的に広げ、それぞれの学習内容を関連づけ、全体像を把握させ理解を図らせることを目的に作成しました。