授業中における指名の方法                          沼澤清一


①「挙手指名」    挙手させて指名する

  日本の教室ではほとんどこの指名の方法が一般的。
     発言機会が子ども自身に委ねられる。 
 ○発表意欲への対応、意欲づけとなる。
 ▲マンネリ化、挙手を待つことで授業のリズムが崩れる。
 ▲よく発言する子は数名に限定されがちで、わかっていても挙手しない子は発言しない。 

      =「したくなければしない」という限界があることを常に意識する。
 ┌────────────────────────────────────────────┐      
 │ 授業中における指名の方法は、学習のねらいや活動によっていくつかの │     
 │パターンを使い分ける必要がある。基本形の限界と課題を踏まえ、様々な  │     
 │指名方法を授業の中で、組み合わせて活用することが必要となる。               │     
 └────────────────────────────────────────────┘      

 

②「順番指名」   縦列や横列による列による指名

 前時の復習や答え合わせ、簡単な質問、逆に、誰も答えられないような難しい質問において、この順番指名を活用する。
 該当の列の子は必ず順番に当たるので、その覚悟や準備ができる。また、自分だけじゃなくてみんなが当たるというある意味、連帯感というか仲間意識が生まれる。安心感を与えるため、「わかりません」や「パス」も認めると良い。
 ○どの子にも発言の機会を保障する。
 ○発言機会は教師主導で、子ども一人ひとりに緊張感が生まれる。
 ▲様々な意見が予想されるため、話し合いを深める工夫が必要となる。

 

③「意図的指名」   ノートの記述やその子の表情、理解度をもとにした指名

 前時までの様子(意見の流れなど)、机間巡視(ノートや子どものつぶやきなど)によって、子どもの意見や理解度を把握した上で行う。
 指名した子どもの意見を単発で終わらせず、他の子の意見や授業のねらいと結びつける教師の意味づけや価値づけが重要となる。該当の子どもが当てられて良かったと思えるように展開することも必要。
 教師の意図(授業の流れ・構成)が反映されるので、
 ○複数の子を同時に指名し順番に発表させて答えにつながりを持たせることができる。また、逆に違う 意見を取り上げ、対比をもとに授業を構成することができる。
 ○発言による話し合いを深めたり広げたりすることができる。
 ▲個々の考えや理解度の把握、教師の学習過程の構想が明確であることが必要。


④「班(グループ)指名」

 班(グループ)を指名することによって、班内での話し合いを導き発表させる。
 ○子ども同士の関わり合いを育む。
 ▲学習規律の徹底、班内の意見をまとめる力が必要とされる。


⑤「自由発言」     指名なしで自由に発言させる方法

 いわゆる民間教育団体などが「指名なし音読、指名なし発表」として実践している。
 ○発表意欲への対応、意欲づけとなる。例えば、1枚の絵をもとに、たくさん答えや気づきがある場合などに有効で、自ら起立して答えることは子どもにとって一つのハードルを越えるというきっかけになる。
 ▲本時のねらいに向けた教師の意味づけや整理などが必要。
 ▲子どもの意見を整理して授業を構成していく教師の力量が大きく問われる。

 

⑥「相互指名」     発表した子が次の発表者を指名

 ①「挙手指名」の教師の指名を発表者が行うことになる。
 ▲一見、活発な子ども主体の授業に見えがちだが、授業の流れ・全体像を把握することができない集団の場合は、まとまりのないバラバラの意見となり、授業が成立しなくなる。
 ○一つの問い、限定された内容についての発表を行う場合に、発表順番だけを相互で行うような場合は、この方法を取り入れて、子ども同士の関わり合いを育むことができる。
 ○しかし、同じ意見を重ねて発表したり、意見の対立を受け入れたりして授業の流れを築き学び合う学級集団となって、こうした授業形態が定着することになれば、ある種の理想的な授業になると言えるだろう。
 ▲ただ、この場合も、子どもの意見だけで学習内容の理解・定着が図られるか、子どもの思考外のいわゆる難しい内容を乗り越えさせることができるかなど、教師の指導なくして行えない部分について絶えず考慮して進めていく必要がある。

 

⑦  その他
   ハンドサインを活用した指名
   起立指名(挙手指名と同じ)


参考文献
 ・社会科における教師の言葉がけ、高岡昌司、「授業研究21」2009年5月号(明治図書)
 ・授業における教師の「指名」について、笠岡市教育委員会