「授業のネタ 教材開発」(明治図書)1996 8月号 

 

子どもが自分でつくる夏休み 

ユニークな生活設計のたてさせ方

 

風景印を押した葉書で休み中の子供達に一言

子どもが自分でつくる夏休み ユニークな生活設計のたてさせ方

風景印を押した葉書で休み中の子供達に一言


 夏休みは長い。子供達ははてな帳を書くことはない。じっくりと物を見て考える力をどこかにおいてきてしまう。
  休み明けは、子供達と一緒に一学期に作り上げてきたものが、遠い世界に行ってしまったように感じられるものである。      
  夏休み中に毎日はてな帳を書かせることは難しい。教師や友達の目が入らぬものは、子供達の意欲高めない。続かない。      
『休み中の生活の予定を立てましう。』             
と休み前に時間をかけて書かせても、大概のものは、その場限りとってしまう。細かくしっかりとせれば書かせたもの程、子供っては、やっかいなものになってしまう。         
 しかし、夏休み中に子供とつながりを持ち、はてな?意識を高めせる方法はある。        
 有田和正氏の夏休みに葉書で子供達を鍛える実践がそうである。    
┌───────────────────────────────────┐  
│ 休み中の出来事&?を、葉書に書いて先生に送ること      │
└───────────────────────────────────┘  
 私は、ここ何年間か、子供達に夏休みの宿題として出してきた。有田実践に一工夫加えてである。 
┌───────────────────────────────────┐  
│  子供達への返事に風景印を押して送る               │ 
└───────────────────────────────────┘  
【風景印】          
 正式には、風景入通信日付印という。郵便局では、普通使われる消印の他に、もう一つ別に風景印と呼ばれる消印がある。風景印には、日付けの他に各地の特産物・名所・人物などがイラストされている。各局すべて違ったイラストで特色を出している。     
◆風景印を押してもらうには! 
 ぽすたるガイド(郵便番号簿)を郵便局から頂き、封筒に、郵便番号、市町村名、郵便局名を書き、     
┌────────────────────────────────────┐
│①子供への返事を書いた葉書   (四・五人くらいが適当)       │
│②風景印を押して郵送して頂けるように書いた手紙           │
└────────────────────────────────────┘
を入れて郵送する。          
 例えば、鳥取砂丘の載った風景を印を押してもらうには、           
〒680-91 鳥取市鳥取中央郵便局  郵便課御中     
でよい。   
 三年生を担任した昨年度は、休みに入る前に、二通の葉書をくばり、私の住所・氏名を書かせておいた。この機会を利用して葉書の書き方を学習した。終業式の日に宿題にまぜて持たせた。
『先生に葉書をくれた人には、必ずお返事を書きます。う~ん、先生は、休み中はパ-マンのお手伝いをしているから、パトロ-ル中に、いろんな所の郵便局から出してあげよう。』    「うそだ~。消印でどこから出したかわかるんだよ」       
「先生は、本当に空を飛べたんだ」
「ぼくのは、遠い所からだよ~」 
 半信半疑のまま休みに入る。   
 子供達からの葉書の一通目には日本各地の郵便局、    
 札幌中央・富士・びわ・京都中央・鳥取中央・神戸中央・大阪中央・那覇中央        
から、二通目には県内の地元に近い市町村の郵便局から返事を出した。(出して頂いた)     
 休み明けに葉書を持って来させる。風景印は、その郵便局でしか押してもらえないことを確認する。
「先生、本当にこんなにたくさんの所に行ったの?」       
『那覇は、暑かったなあ~』   
「本当かなあ?」        
 黒板に日本地図をはって、大雑把に位置を確認した。(子供達は地図帳を持っていないため、詳しい学習はできなかった。)    
 自然と子供達の話題は、休み中どに自分の行った所へと入る。明る楽しい時間となった。      
 風景印はしっかりコピ-しておく。
 四年生に持ち上がった今年は、風景印を学級通信に載せ、みんなに配り、
『このハンコの絵は何だろう?』と疑問をなげかけた。  
 翌日の授業では、子供達が調べてきたことを発表すると、ほとんどの風景印にある建物などの名前が分かってきた。       
『神戸って、どこにある?』   
 地図帳の索引を使って調べる方法は自然と身につく。       
「大阪の風景印は、外側が花になっている。」         
「ばらかなあ?」       
分からなければ、郵便局あてに質問の手紙を送ればいいのである。手紙で、遠くの人に質問する、そういう機会も与えることができる。
 四年生以上であれば、休み明けに葉書を持って来させ、学級通信に載せた風景印を見ながら地図帳を使って、すぐに全国旅行をすることができる。 
 六年生担任時は、関ケ原や種子島からの風景印がおもしろかった。
 今までの学習の復習となる土地から、これからの学習の伏線となる土地から‥‥‥どこから返事を出すかは、教師の教材研究に関わってくる。    
                 
『おもしろい?を見つけたね。元気ですか?休み中の目標、がんばっていますか?‥‥‥』     
 私は、教師の葉書による励ましが、子供達の休み中の生活をさらに有意義なものとしていくことになると考えている。       
 休み前には、子供達には目標を二つくらい持たせ、休み中に教師からの励ましを送り、刺激を与え、休み明けには、        
 『どうだった?』       
「あまりよくできなかった。」  
『そうか、じゃあ二学期にがんばろうか。』           
その程度でいいと思っている。所詮、夏休みは、夏の休みなのである。多くを望んではいけない。  


 札幌の風景印の絵は、時計台だそうです。(そのままじゃないか~)そして、こうべのタワ-は、マリンタワ-というそうです。おきなわのこまいぬのようなのは?わかりません。そして、本をしらべたら、からじしというししがそっくりです。もしかして、からじしかも‥‥。         
 それに、このいぬには、こんなはなしがありました。それは、昔おきなわでは、さかなをとってくらしていて、そして、イルカのたいぐんがきて、さかながにげていってしまって、こまったことがあったそうです。そこで、この犬を海の方へとむけたそうです。そしたら、イルカは、こわくてにげていったそうです。それから、そういうことはなくなったそうです。そして、県庁(おきなわ)のかべには、ぜ~んぶ海の方へむけているそうです。犬の数は、なんと20こちかくだそうです。   (4年 S・Yさん) 
※札幌時計台の歴史がY君から発表されると、小さな絵にもいろんなことが表されていることが分かった。風景印はその土地の姿をコンパクトにまとめている。小さいが故に、子供達の学習には有効であるようだ。         


 教室には、大きく拡大した風景印をはっている。?で終わった建物、名前だけわかったお祭りなどは、1年間をかけて話題にしていくのである。   
 風景印の実践は、           
「5年生を追究する子に育てる」<明治図書>に詳しく記した。お読み頂ければ幸いである。   


 「授業のネタ 教材開発」(明治図書)1996 8月号